令和7年9月定例会(第5号) 本文 2025-10-01

◯九十三番(高木ひろし君)
 通告いたしました四点について順次質問をさせていただきます。  まず第一点目は、旧優生保護法による強制不妊手術の被害者等への補償についてであります。
 戦後最大の障害者差別事件とも言われる、旧優生保護法による障害者らへの強制不妊手術をめぐる問題は、昨年七月の最高裁の判決におきまして、優生保護法という法律自体が憲法違反であったと断じて、国の姿勢を厳しく糾弾するものでありました。当時の岸田首相は原告団らを官邸に招いて謝罪を表明し、本年一月十七日には、議員立法による旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律、以下、補償法といいます。これが施行されました。
 その補償法は、その前文で次のように述べております。
 昭和二十三年制定の旧優生保護法に基づき、あるいはその存在を背景として、多くの方々が優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するといった誤った目的の下、特定の疾病や障害を有すること等──以下、特定疾病等といいます──を理由に生殖を不能にする手術もしくは放射線の照射──以下、優生手術等といいます──または人工妊娠中絶を受けることを強いられて、子を産み育てるか否かについて自ら意思決定する機会を奪われ、これにより耐え難い苦痛と苦難を受けてきた。
 特定疾病等を理由に優生手術を受けることを強いられたことに関しては、平成三十一年に旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律が制定されましたが、同法はこれを強いられた方々に対してその被った苦痛を慰謝、つまり慰めるものであり、国に損害賠償責任があることを前提とするものではなかった。また、特定疾病等を理由に人工妊娠中絶を受けることを強いられたことに関しては、これまで謝罪も慰謝も行われてこなかった。
 しかしながら、令和六年七月三日の最高裁判所大法廷判決において、特定疾病等に係る方々を対象とする生殖を不能とする手術について定めた旧優生保護法の規定は日本国憲法第十三条及び第十四条第一項に違反するものであり、当該規定に係る国会議員の立法行為は違法であると判断され、国の損害賠償責任が認められた。
 国会及び政府は、この最高裁判所大法廷判決を真摯に受け止め、特定疾病等に係る方々を差別し、特定疾病等を理由に生殖を不能にする手術を強制してきたことに関し、日本国憲法に違反する規定に係る立法行為を行い及びこれを執行するとともに、都道府県優生保護審査会の審査を要件とする生殖を不能にする手術を行う際には身体の拘束や欺罔──だますことですね──等の手段を用いることも許される場合がある旨の通知を発出するなどして、優生上の見地からの誤った目的に係る施策を推進してきたことについて、悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪する。また、これらの方々が特定疾病等を理由に人工妊娠中絶を受けることを強いられたことについても、心から深く謝罪する。  ここに、国会及び政府は、この問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、これらの方々の名誉と尊厳が重んぜられるようにするとともに、このような事態を二度と繰り返すことのないよう、その被害の回復を図るため、およそ疾病や障害を有する方々に対するいわれなき偏見と差別を根絶する決意を新たにしつつ、この法律を制定すると、このように実に率直に、この問題に対する敬意と認識を述べた上で、優生手術被害者及び配偶者やその遺族に対する補償金の支給等について定めています。また第四章では、優生手術及び人工妊娠中絶に関する調査を行い、これらが行われた原因及び再発防止措置について検証を行うことも明記をしております。
 このような法律が成立、施行されたことを受けて、我々愛知県としては何をなすべきでしょうか。それはまず、長年厳しい状況に置かれてきた不妊手術や中絶手術の被害者一人一人に対して、謝罪の意味を込めた補償金を一人残らずお届けするよう努めることであり、こうした優生手術がどのように行われてきたのかという被害実態の検証を通じて、被害者に対する差別と偏見を根絶することにあると思います。
 しかし、この法律の根底にあった不良な子孫は残さないほうがよいという、いわゆる優生思想の名残はいまだに根強いものがあり、実際に手術を強いたのが家族であったことなども含めて、被害者が声を上げづらい状況がいまだにあると考えられます。この補償法の支給対象となり得る方は政府の統計上だけでも、優生上の理由による不妊手術が二万五千件、同じく優生上の理由による中絶手術が五万九千件と、合計八万四千件にも上るはずですが、実際の補償は、補償法施行後半年時点を経ても僅か千人にとどまっていると言われております。
 そこで、愛知県に三点質問します。
 まず一つ目、愛知県におけるこの補償法施行後の相談件数、請求件数及び認定件数をお答えください。
 二番目、審査や手術、カルテなどの資料がほとんど廃棄されてしまっているという中で、一九六六年度から七一年度当時の愛知県優生保護審査会の審査記録が見つかっております。個人名や審査理由などが記されている貴重な手がかりであります。手術を行うことが適とされた五十五人の方々が補償から取り残されることがないよう、プライバシーに十分配慮しつつ、個別通知を行うべきだということを求めてきましたが、これまでどのように取り組んでこられたのか、また、今後どのように取り組んでいくのか、お答えください。
 三番目、補償法の対象者が一人でも取り残されることがないように、あらゆる手がかりを通じて優生手術の被害者を掘り起こす調査、検証が必要です。その意味で、愛知県精神医療センターには旧城山病院時代を含めたカルテが全て保存されているということが確認をされております。県としてはこれを速やかに調査すべきと考えますが、カルテを管理している病院事業庁の見解をお尋ねいたします。
 二つ目のテーマに移ります。
 三十年目を迎える長良川河口堰の最適運用についてであります。
 長良川は日本を代表する清流として知られており、長良川河口堰ができるまで、本州の一級河川で唯一本流にダムのない川でありました。そして伊勢湾に注ぐ下流域には、海水と淡水が混じり合う広大な汽水域が存在し、これがニホンウナギやヤマトシジミなどが豊富に生息する貴重な生態系となっていました。長良川を代表するアユやサツキマスも、川と海を行き来する魚たちであります。これを分断する河口堰の建設が大きな反対の声を浴びたのは当然であったと思います。しかも、この河口堰の建設の主目的とされた水資源の確保については、実際には一六%しか使われることはなく、その最大の利水者とされた愛知県は治水分を含めて、実に建設費の三分の一に当たる五百二十七億円、利子分を含めると約八百億円をこれまで負担をしてきております。
 こうした大問題を抱えつつ、一九九五年に河口堰のゲートが下ろされてから三十年がたちました。この間、アユの漁獲量は八割減少し、ニホンウナギの漁獲量も九二年の二十一トンから二〇二二年には僅か百九十一キロへと激減をするなど、長良川の生態系へのダメージは明らかであります。
 こうした現状に対し、愛知県は二〇一二年、大村知事の選挙公約に基づいて、小島敏郎愛知県政策顧問を座長とする外部専門家で構成する愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会を立ち上げ、失われた汽水域の復活を目指して検討や提言を続けてきております。同委員会は、農業への塩害や知多地域への導水事業に与える影響を回避しつつ、試験的開門調査を行うよう呼びかけていますが、河口堰の運用主体である水資源機構や国との間で協議のテーブルさえできぬまま、三十年目を迎えております。
 この長良川河口堰をめぐる議論が契機となって、一九九七年には河川法が大改正されました。この改正では、従来の利水と治水に加えて、河川環境の整備と保全が追加されて、水質、景観、生態系など多様な自然環境の保全が河川法に重視されるようになったとともに、河川管理の方針や計画に地域の意見を取り入れることが明記されました。この長良川河口堰の運用をめぐっては、国と関係自治体の対話が実現していないという現状は、この河川法上も大変残念な事態と言わなければなりません。
 そこで質問です。
 一つ目、愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会は、昨年、韓国の洛東江という川の河口堰を視察したということでありますけれども、その成果と今年度の委員会の検討状況について伺います。
 二番目、愛知県としてこのような検討委員会の動きを踏まえて、長良川河口堰の最適運用について、今後どのように取り組んでいくのか、お答えください。
 三つ目のテーマに移ります。
 愛知県立高校のバリアフリー化についてであります。
 愛知県立高校百四十八校中、エレベーターの設置されているのは僅か十校。全国的に見ても異常に整備が遅れているということを、私は本年三月の議案質疑の中で指摘をしました。そして、昨年の県教委自身が調査されたことによりまして、愛知県内の小中学校に車椅子を使用して通学する生徒児童が二百四名在籍しているということが明らかになりました。これら児童生徒の高校進学に応じていけるよう、県立高校におけるエレベーターを順次整備していく計画づくりを県教委にお願いをしてきたところですが、いまだ明確な答弁をいただいておりません。
 一方、愛知県教育委員会としての障害者雇用をめぐっては、二〇二四年六月一日時点で一・六%と、法定雇用率二・七%を大幅に下回る現状にあり、これまた全国で最下位の状態のままであります。教育委員会の法定雇用率は今後二・九%へとさらに引き上げられていく中で、愛知労働局からも強く改善の指導がなされているはずであります。この指導を受けて、この三月に改定されました愛知県教育委員会障害者活躍推進計画も極めて不十分な内容であります。この計画の冒頭では、障害者の教員免許取得者が非常に少ないことを雇用率達成の困難原因に挙げていますが、これは教育委員会自らの責任を棚に上げた論理と言わざるを得ません。職務環境の整備の項目の中では、県立高校におけるエレベーター設置計画の記載は一切なく、階段昇降機などで対応するとしていますが、国はバリアフリー法に関連して、階段昇降機や階段昇降車なるものはエレベーターの代替措置としては認めないとしていることを御存じないのでしょうか。
 教員になりたいと強い熱意を持って県立高校の普通科を目指したが、エレベーターが設置されていないために受験そのものを断念してしまったという車椅子ユーザーの優秀な若者を、私はこれまでも何人も見てきました。県立高校が障害のある生徒を迎え入れる環境整備を進め、大学に進学して教員免許を取得することをもっと支援すべきだと思います。そうした取組のみが教育委員会の障害者雇用率達成への王道であると言えるでしょう。
 これまで愛知県では、基本的に新増築や改築の場合にしかエレベーターを整備してきませんでしたけれども、今年度から既存建物にもエレベーターを追加増設していく方針を示しています。これ自体は前進と評価したいと思いますが、その優先対象をエレベーター未設置の特別支援学校十校としていることには疑問を呈さざるを得ません。エレベーターが設置されていない百三十八校の県立高校にこそ、まず計画的に増設が進められるべきではないんでしょうか。
 国連の障害者権利委員会からも、日本の教育における障害のある生徒に対する分離主義が厳しく批判をされております。障害のある生徒の進路を特別支援学校に限定するような施策は、インクルーシブ教育の理念にそぐわないということを明確に認識すべきであります。
 そこで、県教育委員会に質問いたします。
 障害のある生徒にも、そして障害のある教職員にも、開かれた県立高校を目指して、エレベーターの設置を含む県立高校のバリアフリー化にどのように取り組もうとしているのか、お尋ねをいたします。
 最後、四点目であります。
 令和六年度包括外部監査について伺います。
 本年三月末に提出されました令和六年度包括外部監査に対する県の基本的な受け止めと、そこで指摘及び意見と付された事項に対する措置、改善にどう取り組むべきかという点についてお尋ねいたします。
 そもそもこの包括外部監査制度というのは、一九九七年の自治法改正によって自治体に導入されてきたのでありますけれども、これは、地方分権が大きく進む一方で、官官接待や空出張などというようなあしき行政内部の慣行が社会問題化したことが一つのきっかけとなっております。自治体のコンプライアンスや経済性、効率性、有効性、これらの点検を強化する必要から、従来の内部監査制度である監査委員制度とは別に設けられた制度でありまして、外部の公認会計士や弁護士などの専門職が、外部からの視点で任意にテーマを設定して、独立して監査をすることにその最大の特徴があります。
 本県は、弁護士である田口勤氏を前年度に引き続き愛知県包括外部監査人とする契約を結び、千八百万円の経費予算とともに、本県議会もこれを承認して、監査業務を一年間にわたって行ってきました。監査人は令和六年度の監査のテーマを、官民連携について~PFI事業と指定管理者制度併用施設~に定めて、補助者として十二人の弁護士や公認会計士らの協力を得て、具体的に、愛知県国際展示場、いわゆるアイチ・スカイ・エキスポです。二つ目、STATION Ai、三つ目、愛知県新体育館、いわゆるIGアリーナであります。この三事業について、現地調査や関係部署とのヒアリングを重ねてきました。
 その結果、法令等に違反している事項や著しく不当な事項に対する指摘が二項目、改善することが望ましい事項に対する意見が三十八項目、これが監査報告として報告をされました。いずれもPFI法によって可能となった公共施設の建設、維持管理だけでなく、企画や資金調達を含めた包括的な民間事業者への委託手法を積極的に活用した県の三事業において、事業者の選定過程における問題を中心にその公正性や透明性を担保し、改善するための重要な指摘、意見だと私は受け止めました。
 しかるに愛知県は、報告を一か月もたたない四月二十五日付で、この報告の核心たる指摘部分を中心に全面的に反論する愛知県の見解なる文書を公表したのであります。その内容は、国際展示場や新体育館事業に対して頻繁に助言をしていただいている県の政策顧問と県の関係を、守秘義務などを定めた契約書に基づくものとすべきかどうか、事業者選定委員会の位置づけなど、愛知県PFI導入ガイドラインの規定運用が適切かどうかなどの指摘について、県はいずれも現状は適切であって、監査人の指摘は事実誤認や独自の法解釈に基づくものと断じて、これを退けたのであります。
 この真っ向から相反する報告と見解を同時に受け取った私たちは、当惑を禁じ得ない、これは私だけではないと思います。テーマが県にとって極めて重要なPFI事業に関わるものだけに、議会としても看過できない事態と言わなければなりません。
 過去の包括外部監査では、債権の管理回収について~未収金の解消に向けた取組の対象となりうる債権を中心に~、これは令和四年度の、同じく田口監査人による監査報告でありました。そのほか、令和三年度では環境政策、令和二年度では女性の活躍促進事業に対する財務事務の執行について。これらは非常に極めて時宜を得た的確なテーマが監査人によって選ばれて、専門家による外部監査ならではの忖度なしの厳正な報告があり、県はこれを真摯に受け止めて、必要な措置や改善に取り組んできたと認識しております。今回の県の対応はこうした過去の姿勢とは全く違った異例の対応であり、最初に述べた包括外部監査制度の趣旨にのっとったものとは言えないと思われます。
 そこで質問いたします。
 今回の令和六年度包括外部監査報告に対して、基本的に県はどのようにこれを受け止めているのか。報告後すぐにその核心部分を否定する愛知県の見解を公表するという異例の対応を取った理由を御説明ください。
 次に、この報告には、愛知県のPFI事業の在り方について、非常に多岐にわたる指摘や意見が含まれており、愛知県の見解を示した部分以外にも、今後の県事業の在り方について重要な示唆を含むと私は考えますが、この報告に沿った措置や改善を行っていくつもりがあるのかどうか、お答えください。
 以上で私の壇上からの質問を終わります。理事者各位の誠実な答弁を期待して壇上を降ります。よろしくお願いします。(拍手)

◯保健医療局長(長谷川勢子君)
 旧優生保護法による強制不妊手術被害者等への補償のうち、初めに、法施行後の相談件数、請求件数及び認定件数についてお答えします。
 法施行日の二〇二五年一月十七日から九月十五日までに本県で受け付けた補償金等の相談件数は五十八件となっております。
 請求件数は、補償金が三十六件、優生手術等一時金が八件、人工妊娠中絶一時金が五件であり、合わせて四十九件となっております。
 そのうち認定件数は、補償金が二十件、優生手術等一時金が二件であり、合わせて二十二件となっております。
 次に、県に記録が残っている五十五人の方の補償に向けた取組についてお答えします。
 本県では、優生手術等を受けられた方々の背景や当時の状況が様々であるため、慎重に対応すべきと考え、個別に通知は行わず、ポスターやリーフレット、ウェブページなど様々な媒体を活用し、周知を図ってまいりました。
 しかしながら、県に記載があった五十五人のうち、法施行後、請求があったのは一人にとどまっていることを踏まえ、個別通知を行うことといたしました。
 本県では、関係市町村の協力を得て、残りの五十四人の現況について調査を行ったところ、御存命の方が十三人、亡くなられた方が二十七人、所在の確認ができない方が十四人でした。
 今後は、亡くなられた方の相続人の特定や、所在が確認できない方への調査をさらに進める必要があります。
 こうした作業は複雑であり専門性が求められますので、愛知県弁護士会の協力をいただきながら、調査を進めてまいります。
 県といたしましては、確認が取れた方から速やかに職員が直接面談し、補償制度の内容や救済方法について丁寧に説明を行ってまいります。
 失礼いたしました。補償制度の内容や、さっき救済と申しましたけど、請求方法について丁寧に説明を行ってまいります。

◯病院事業庁長(丹羽康正君)
 精神医療センターに保存されているカルテの調査についてお答えします。  旧優生保護法適用期間におけるカルテ等の資料については、二〇一八年三月の国の通知に基づき、保健医療局から関係医療機関宛てに保全の依頼がなされ、精神医療センターにおいても旧城山病院当時のカルテが保存されております。
 二〇二五年一月に施行された旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律第三十三条では、国において、旧優生保護法に基づく優生手術などに関する調査その他の措置を講ずるとともに、当該措置の成果を踏まえ、当該事態が生じた原因及び当該事態の再発防止のために講ずる措置について検証及び検討を行うものとされております。
 また、当時のカルテの調査を行うに当たっては、精神科診療等の専門的知識が必要になると考えております。
 こうしたことから、今後、国において、調査そのほかの措置が講じられた際には、精神医療センターにおいても、その方法に従い、対応してまいりたいと考えております。

◯建設局長(西川武宏君)
 愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会の検討状況についてであります。
 昨年度、委員会において韓国・釜山の洛東江河口堰を視察しております。
 その結果報告によりますと、現地では、開門に対する賛否両論が存在したことから、開門に至るまでには長い年月を要したとのことであります。
 現在も開門は一部にとどまっており、完全な開門には至っていない状況でありますが、汽水域の回復という共通の目標を関係者間で共有することにより、対立を乗り越え、開門への道筋をつけることができたとされております。
 一方、長良川河口堰においては、現在も委員会において開門に向けた河口堰の最適な運用について検討を重ねているところであります。
 こうした状況を踏まえ、委員会では韓国の事例を参考にしながら、対立から対話へ向かうべきであるとの新たな議論が始まったところであります。
 今年度におきましては、委員会で、気候変動やネイチャーポジティブ、いわゆる自然再興といった、立場を超えて様々な関係者が集えるテーマを掲げ、シンポジウムなどの開催について検討を進めるところであります。
 次に、長良川河口堰の最適な運用に向けた県の取組についてであります。
 長良川河口堰は、治水及び利水を目的として建設されており、本件にとっては知多半島へ水を供給する重要な施設であります。
 一方、環境面においては改善を求める声もあることから、施設管理者である水資源機構が、河口堰の弾力的な運用を実施しております。
 この運用は、ゲートの開閉操作によって一時的に流下量を増大させ、河口堰上流の水質改善を図るものであり、継続的なモニタリング調査の結果、河口堰上流の水質はおおむね改善傾向にあると報告されています。引き続き、同機構は学識者の助言を得ながら、さらなる調査を継続していくこととしております。
 本県といたしましては、治水、利水と環境の調和が図られるように、愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会において不断の検証、検討を行い、また、国、水資源機構に対してさらなる弾力的な運用を働きかけてまいります。

◯教育長(川原馨君)
 県立高校におけるバリアフリー化についてお答えいたします。
 県教育委員会では、これまで、人にやさしい街づくりの推進に関する条例に沿って、スロープや手すりの設置など、県立学校のバリアフリー化を進めてまいりました。
 県立高校へのエレベーターの設置につきましては、同条例施行規則において設置が義務づけられている三階以上で、かつ、床面積の合計が二千平方メートル以上の建物を新築、増築または改築する場合に整備してきたところでございます。
 こうした中、二〇二〇年十二月に文部科学省から、要配慮児童生徒等が在籍する全ての公立小中学校等にエレベーターを整備するとの目標が示され、高校等についても、この目標を参考に取組を進めることとされました。県教育委員会では、昨年度から、小中学校において車椅子を常時使用している児童生徒の在籍状況を調査しており、今年度の九月一日現在では、四十四市町の学校に二百一人が在籍をしております。このため、既設校舎へのエレベーター設置やスロープの整備等について、こうした子供たちが順次、県立高校等に入学する時期を迎えることを踏まえながら考えていく必要がございます。
 昨年度、まずは必要性の高い特別支援学校の既設校舎へのエレベーター設置に向けて、名古屋盲学校及び岡崎盲学校において基本調査を行ったところ、増築するエレベーター棟と一体となる既設校舎についても、現行の建築基準法に適合させるため、教室の壁を耐火構造にするなどの大規模改修が必要となることが判明し、予定どおりの工事着手が難しい状況となっております。
 県立高校の既設校舎へのエレベーター設置につきましても、同様の課題が生じる可能性があることから、今後、県立高校のバリアフリー化に向けて、具体的な実施手法を検討するなど、障害のある生徒、教職員が安心して学び、働ける環境の整備に努めてまいります。

◯総務局長(纐纈知行君)
 令和六年度包括外部監査の結果報告書についてのお尋ねのうち、初めに、その受け止めと愛知県の見解を作成、公表した理由についてお答えします。
 令和六年度の包括外部監査につきましては、官民連携について及び包括外部監査結果の対応状況についての二つのテーマを監査人が設定し、実施されました。
 監査を受けるに当たっては、監査人からのヒアリングや資料提出、現地視察などに真摯に対応いたしました。また、監査の結果報告書の取りまとめ段階におきましても、監査人には、事実誤認や法解釈の指摘を含め、事業は適切に行われていることを丁寧に説明し、理解を得られるよう努めてまいりました。
 しかしながら、地方自治法に基づく監査委託契約の報告書提出期限である年度末を迎えるに至り、結果的に、指摘や意見とされた事項の中に、事実誤認による記述や、監査人独自の見解による記述が多く含まれる内容の監査結果報告書を受け取らざるを得なかったものであります。
 このままでは、こうした報告書を御覧になった方々に、事実誤認や誤解を与えてしまう可能性があることから、本県の認識や取組内容、客観的な事実を明らかにするため、県顧問弁護士による法務相談を行った上で、愛知県の見解を作成し、公表したものであります。
 次に、包括外部監査における指摘等に対する対応についてお答えします。
 本県におきましては、これまで、一九九九年度の包括外部監査制度の導入以来、監査結果に対し、真摯に対応してまいりました。
 具体的には、監査の結果報告書で、指摘及び意見とされた事項につきましては、関係局で対応を検討し、可能なものについては是正、改善の措置を講じております。
 令和六年度の包括外部監査の結果報告書への対応につきましても、対応可能なものについては、所要の措置を検討いたしますが、愛知県の見解でお示しした事実誤認や監査人独自の見解に基づく指摘等への対応は、困難であると考えております。
 県といたしましては、引き続き、包括外部監査制度の適切な運用に努めてまいります。

◯九十三番(高木ひろし君)
 御答弁をいただきましたが、一点の再質問と、それから要望を述べさせていただきたいと思います。
 まず再質問は、旧優生保護法に基づく強制不妊手術被害者への補償についてであります。
 病院事業庁の御答弁では、もう八年前に愛知県独自の調査によって優生保護法の有効期間中の全カルテの存在が確認された愛知県精神医療センター、旧城山病院ですね。これはもう愛知県の中でもここだけです、全カルテが保存されているのは。このカルテが確認されて、その中に優生保護に関する情報があることが分かっているのに、いまだにこの調査に着手をしていない。国の補償法では国が調査するというようなことを病院事業庁はおっしゃいましたが、別に国の調査の指示を待つ必要はないんです。県自体の判断で、県が保管するこのカルテを速やかに調査して、この中から優生保護に関する手がかりを見つけ出して補償を実行すべきだと思いますが、いかがでしょうか。この点、もう一度お尋ねしたいと思います。
 それから要望であります。
 これは、最後に質問しました包括外部監査についてでありますが、私は今回、この包括外部監査報告を取り上げるに当たり、監査人である田口勤弁護士にもお会いして、十分な説明を伺ってきました。その結果感じましたことは、県との大きな認識の差が生まれてしまった根本には、この県の政策顧問という方の存在の法的な曖昧さがあるということを強く感じました。
 県の政策顧問は現在三人いらっしゃるそうですが、この報告で指摘をされている方はインデックスコンサルティングのCEOである植村公一氏を指すものと思います。しかし、報告書の中ではその氏名をあえて記していないのは、今回の監査目的があくまで法律論、制度論としての現行の愛知県政策顧問設置要綱、これでは不十分であるという指摘、意見を県に対して述べることにありまして、個別的な同政策顧問個人の行動の評価に立ち入ることは避けるべきだという監査人としての判断があると考えられます。
 私自身、県会議員としての活動の中で、植村さんという政策顧問のお名前を耳にしたことがあります。しかし、実際にお会いしたこともお話を伺う機会も全くありませんでしたために、独自の判断材料を全く持ち合わせておりません。したがって、県が愛知県の見解で主張するように、同顧問に守秘義務を課す必要は全くない。一私人として善管注意義務を十分認識されているのであるから、何の問題も起きていないし、何の問題もないんだと、こう言い切っていることににわかに納得することができないのであります。
 同政策顧問は、PFI事業に関して、余人をもって代え難いほどの専門的見識をお持ちであり、その見識をもって本件事業に多大な貢献をいただいていると、同顧問を擁護したい県の立場は理解できなくはありません。しかし、その擁護姿勢があまりにもかたくなに映りますと、守秘義務を明記することで何か不都合が生じるのではないかとの疑念が逆に生じることもなりかねません。政策顧問としての役割が重要であればなおさらのこと、東京都の政策顧問がそうであるように、守秘義務を明記した契約書に基づく明確な関係に県と政策顧問が結ぶほうがふさわしいと思いますが、議会の皆さんはどうお考えになるでしょうか。
 このPFI事業をめぐる問題は今後の県政にとっても非常に重要なものであり続けておりますだけに、今回の包括外部監査の指摘や意見と、愛知県の見解とのどちらが正しいのか、議会として今後しっかりと議論の対象にすべきだということを申し上げて要望といたします。

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